秋を漢文や漢方の世界では白秋と呼ぶことがあります。この呼び名は陰陽五行説に由来するもので、五行の木火土金水のそれぞれに、色、季節、気候、関連臓器、病気になりやすい器官、病気になったときの好みの味、その病気に効果のある野菜などが配当されています。秋は金に属し、金−秋−白−燥−肺・大腸−鼻−辛−葱となります。ちなみに春に対応するのが青春です。夏は朱夏、冬は玄冬となり、これを人生に当てはめれば、青年期が青春、壮年期が朱夏、中年期が白秋、老年期は玄冬となります。北原白秋が白秋の号をはじめて使ったのが、16歳の時ですから、彼は青春から白秋だったわけで、ずいぶん老成した少年だったのかもしれません。ところで陰陽五行説に従えば秋になると、空気の乾燥と朝晩の冷えから鼻や咽喉など痛めやすく、鼻炎になったり、風邪を引きやすくなります。また喘息体質の人も悪化しやすく、痔が悪化しやすくなるのもこの頃が多いのです。この時期に唐辛子を中心とする辛味性の強い香辛料(カラシ、ワサビなど)を多く摂りすぎると、鼻や咽喉、肛門の粘膜が刺激され、充血を起こしやすくなるのです。そこに冷たい秋風を受けたりすると、いっぺんに炎症を起こすようになります。そのような時に良いのが、長葱です。この長葱の白い部分を、漢方では葱白といい、風邪や頭痛の薬としてよく使うのです。よく使われる処方で、いわば薬膳スープとも言えるおいしい漢方処方があるので紹介します。
葱白1本、ひね生姜5gほどを適当に刻んで、適量の水を加えて、10分から15分ほど煮詰めればよいのです。薄い塩味として、頭痛や肩凝りがひどい時には葛粉を溶かし込むようにすると一層効果的です。これで簡易葛根湯の出来上がりです。このスープを飲んで、首に緩めにタオルを巻き、少し厚着をして寝て、汗を少しかくようにすれば、すぐによくなります。もし咽喉が痛む時は首に焼き葱のシップを併用するとさらに効果的です。
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