3月、4月は1年のうちでも最も美しく花が咲き乱れ、楽しい季節であったのに、最近ではスギを中心とした花粉症に苦しみ、花をうらめしく思ったり、花粉の少ない雨の日のほうを喜んだりする人が多くなってしまった。
花粉症の記録はヨーロッパでは古く、最初イギリスで、枯草熱として報告されていた病気が1870年代に花粉症と認知された。日本では1961(昭和36)年にブタクサ花粉症の症例が報告され、ついで1963年、栃木県の日光においてスギ花粉症の症例が初めて報告された。
それから増加の一途をたどり、「花粉症保健指導マニュアル平成15年度改訂版」(環境省)によれば、「国民の十数パーセントが花粉症と推定される」とあるから、現在では軽く1千万人を超えている計算になる。まさに国民病である。
花粉症の種類と時期の関係については、種類については今まで60種類ほど報告されているが、主なものをあげれば、1月半ばから5月まではスギ、ヒノキ、ハンノキ属が多く、4月から10月まではイネ科の植物が、8月から10月の間はブタクサ、ヨモギ、カナムグラが多い。
花粉症の抗体ができる感作率は20〜40歳が高いが、発症率は20〜50歳が高く、女性より男性の方が多いという特徴がある。しかし花粉症は花粉だけが原因で発症するわけではなく、他の環境的要因、特に排気ガスや欧米化した食生活も大きな原因と考えられる。
日本の花粉症患者は1970年ごろから急速に増加したが、食生活も大きく変化して1960〜70年の10年間で砂糖の摂取量は9倍、乳製品の摂取量は23倍に跳ね上がったのである。
スギで覆われた高野山や比叡山の僧侶たちが花粉症でお経をあげられないということもないし、先進国ほど多く発生し、途上国に少ないことを考えても、原因として食生活のウエイトの高いことが分かる。最近になって中国でも花粉症が見られるようになってきたのも同様の理由と考えられる。
対策としては砂糖を中心とした甘味料や唐辛子を中心とした香辛料の摂取を極力控えるようにすると、それだけで大きな予防効果を発揮する。砂糖や唐辛子の辛味成分はたんぱく質ではないので、通常のアレルギー検査では引っかからないが、これらは粘膜を充血させる作用があるので、花粉症の黒幕として大きなウエイトを占めている。十味敗毒散(じゅうみはいどくさん)や小青龍湯(しょうせいりゅうとう)、白虎加人参湯(びゃっこかにんじんとう)などの漢方薬が効果的。
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