11月にはいると、3日の文化の日から15日頃にかけて、全国の寺社で菊祭りが行われる。菊の紋章を皇室が用いていることから、菊は日本の在来種のように思われ、一部の古代史の好事家は、ダビデの紋章との関係から、ユダヤ民族と日本民族との関係を議論し、菊が登場する『ホツマツタエ』なる本を、古代文字で書かれた『古事記』(712年)以前の歴史書と言っている。このように菊は日本の古代史を賑わせているが、菊は『万葉集』(759年)には1首も登場せず、『懐風藻』(751年)になって、長屋王の歌などに4首登場する。よって天平年間頃に中国から渡来したと考えられるのである。皇室での紋章としての使用は、鎌倉期の後鳥羽天皇が菊の花をたいへん好み、自分の紋章としたことから始まっている。中国で菊の花を観賞するようになったのは唐代からで、本来薬用や食用にしていた。『神農本草経』には「頭痛やめまい、腫痛、眼がぬけるように痛み涙がでるもの、死んだように艶に無い皮膚、風邪などを治す」とその効用が記されている。漢方薬菊花としては、現在多く見られる大輪の菊ではなく、小菊の頭状花の乾燥したものを用いている。菊花を用いる場合、必ずしも煎じなくてもよく、乾燥した蕾をティースプン一杯ほどをカップに入れ、熱湯を注ぎ3分ほど置いて服用すればよい。なかなか美味である。その効用は、風の初期、頭痛、めまい、精神安定、眼痛、眼の充血、涙目などに効果がある。中国では菊花茶としてよくお茶の代用にする。眼の疾患に多く用いるが、眼精疲労が強い時には枸杞の実を5,6粒入れるとよい、また眼の充血、炎症、渋り眼などには、中華街や漢方薬店で売っている金銀花茶(すいかずらの花の乾燥品)を同量ブレンドするとよい。また別な用途としては菊枕がある。菊の乾燥品を枕の中に混ぜたり、枕の下に忍ばせるのであるが、これは不眠症やよく熟睡できない人によい。
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